歯抜けのおっさん

pajama_toriya2005-08-07

 トータルテンボスのとある仕事でタイに行ってきたのですよぅ。
わたくしパジャマとりや、実は海外に行くのは3回目であります。
ホームレス寸前の生活に四苦八苦している割に、海外経験があるとは予想外だったであろう。
高校1年生の時、サッカー部の遠征で韓国へ行った。
サッカーで韓国?
「この人サッカー上手いんだろうな」
と思いますよね?
普通は県の選抜とか、強豪校が招待されて行くのだが、わたくしの高校が行った理由は他でもない
「韓国に行きたいから行く」
というただ金を出しただけのモノであった。


高校2年の修学旅行では台湾に行った事がある。
あれから12年。
初の東南アジアである。
うっひょう。
何て楽しみなのだろう。
血湧き肉踊る気持ちで迎えた8月2日の夕方。
成田空港発ノースウエスト航空タイ行きの便に乗り込む。
タイへ行ったのは4人。
トータルテンボスの二人、アッハー小泉、そしてわたくしパジャマとりやである。
パスポートをチェックされ、
「荷物をX線か何かで透視して危険物をチェックされる黒いカーテンのあれ」に荷物を流し、
ボディチェックをされ、にわかに緊張し、搭乗を待つ。
18時頃からしこたま待つ。
とにかく待つ。
大変ヒマである。
何故飛行機に乗るのはここまで待たせるのか。
日本円をタイの通過バーツに両替し、友達へ「タイ行ってくるぜメール」も打ち終え、あとは乗り込むだけなのに、ひたすら待つという待ち地獄を味わう。
もう眠ろう。
警戒心の強さからかなかなか眠らないわたくしパジャマとりやがウトウトし始めた時、あるおっさんが話しかけてきた。
歳は45歳ぐらいか。
紺のスラックスにヨレヨレの青いワイシャツを着たおっさんがこちらに微笑んでいるじゃないか。
おっさん「長いね。いや〜長いね。早くすればいいのに(微笑)」
つぶらな瞳を細くして、日に焼けたおっさんは隣に座りだした。
パジャマ「そうですね。」
とりあえず返事をした。が、わたくしは眠ろうとしていたのです。
見ず知らずの人間が眠そうにしているのに話しかける非常識さに、このおっさんの異端ぶりを感じたわたくしは、少し相手をすることにした。
何か面白そうな事があるかもしれないからである。
おっさんもタイへ行くらしい。同じ便だと知るとまた微笑んだ。
上の前歯が2本しか無い!
歯抜けのおっさん「タイはね、もう40回以上行っているからさ、飽きちゃったんだ〜」
パジャマ「そうなんですか、お仕事ですか?」
歯抜けのおっさん「ん・・・・・・。あんちゃん達は初めてか?」
パジャマ「タイは初めてです。しかも誰も英語を話せないんですよ。大丈夫ですかね?」
歯抜けのおっさん「ん・・・・・・。俺はエコノミークラスしか乗ってないんだ。値段が安いからなヘッへッへ(笑)」
コイツは駄目だ!会話が成立しねぇ!!
こちらの質問は全て馬耳東風だ!
こりゃあ我慢できねぇ。比較的心の広いわたくしも自然にフェイドアウトしなければ!
どうしよう。
藤田は危険を感じてすっかり遠くの席でヘッドホンをつけて雑誌を読み、なおかつサングラスをして「おっさんお断りキャンペーン開催中」の様相を呈している。
こういう時の藤田はしたたかだ。



大村は寝ている。おっさんを振っても無視するだけだろう。
それはそれでかわいそうだし、歯抜けのおっさんが逆上したら面倒臭い事になるやもしれぬ。
パジャマ「アッハー、このお父さんタイに詳しいんだって」
アッハー「マジすか」
パジャマ「こっち来なよ」
アッハー「はい」
こうして難を逃れたわたくしは心の平和を取り戻した。
アッハーはかれこれ1時間は捕まっていた。


19時30分を回ったあたり。アナウンスが流れ、乗客が一斉に並びだす。
ようやく飛行機に乗り込むのだ!
クネクネ歩き、飛行機の中へ。
大きな荷物と共に狭い通路を歩き、座席に着く。
完全にうきうきである。
歯抜けのおっさんとの不毛な長き戦いを終えて、目から「死んだ魚感」が取れきっていないアッハー小泉もテンションが上がってきたみたいだ。
アッハー「飛行機だ!ひこうき〜!」
藤田「た、たのしい!!」
パジャマ「テンション上がるってこれは!こりゃ楽しいっ」
大村「ZZZZ」
早い!あまりにも早い眠りに驚愕した。
これから魅惑のタイランドに飛び立とうと言うこのタイミングでの眠り。
すごい早さだ。のび太級の睡眠欲である。


約6時間に渡る空の旅。
座席は窓側ではなく、真ん中の4列ほど連なった席だった。
窓AB通路CDEF通路GH窓
となっている


C席には知らない小太りのサラリーマン氏



D席にはわたくしパジャマとりや



E席には藤田



F席には大村



通路を隔てて


G席にアッハー小泉




窓側のH席には、歯抜けのおっさん!!



ゲェ〜!!


途中、アッハー小泉の、明らかに嘘の笑い声で目が覚めた事は覚えている。