トモダチ

 トータルテンボス藤田とアッハー小泉、そこにわたくしパジャマとりやを加えた3人は、仕事が終わると「トモダチ」になるのだ。
どういう事かというと、トータルテンボスのライブに関して動いている時は先輩と後輩であり、「仕事仲間」なのだ。藤田とわたくしパジャマとりやは東京NSCの3期生、アッハー小泉は4期生、つまり吉本興業の伝統とも言えるであろう上下関係が存在するのだ。
しかし、打ち合わせなどの仕事が終わったその瞬間から、3人は平等、つまりトモダチになるのだ。
よく3人同時に言う言葉が
「俺たちはトモダチだ!!」
要は仲が良いだけなのだが、これが結構楽しいのだ。
大抵、誰かが思いついたミニコントを仕掛けているだけで、これといって他には何も無い。
先日もルミネの後に打ち合わせをした。アッハーが藤田の家に泊まる事になり、わたくしパジャマとりやを入れて3人で西武新宿駅に向かう。切符を買い、ホームに入る。
藤田の様子がおかしい。ニヤニヤしている。何だ?
ずんずんと人ごみを掻き分け、一人藤田が進んでいく。かなりの早さだ。10メートルは先を行かれている。急いでいるわけではない。何故なら、真横に停車している準急が発車するまで5分はあるからだ。
パジャマ「お〜い藤田、歩くの早くない?」
藤田は黙々と歩いていく。
たまりかねた後輩のアッハーが声をかけようとしたその時、藤田が電車に乗り込んだ。慌てて電車に乗り込むアッハーとわたくしパジャマとりや。車内には立っている者はいない。席が丁度埋まる人数だ。一瞬見失った藤田を探そうと車内を見回したその時、藤田の大きな声。

藤田「おい、ワキガハラ、ここに座れよ」

???
何を言っているのだ?ワキガハラ?漢字で書けば「腋臭原」か?他の乗客がジロジロ見ている。困惑するアッハー。しかし、わたくしパジャマとりやは瞬間に理解した!藤田のニヤニヤの理由はこれだ!
パジャマ「おう」
藤田の横に座り、「ワキガハラさん」になりきる。勿論、乗客は皆「ああ、あの人がワキガハラか」という信じきった目をしている。わたくしは、敢えて乗る事にした。乗客から言われ無き白目を剥かれようが構わない!「毒を喰らわば皿まで」だ!
しかし、自ら乗ったとはいえ、このままでは恥をかいたままだ。

パジャマ「なあ、ニョウバ、明日何時だっけ?」

藤田は、一瞬「やられた!」という表情を見せたが、彼もプロ。
藤田「13時だよ。ワキガハラ。」
他の乗客たちは、またもや驚いたはずだ。それもそうだ。「腋臭原」と一緒にいるのが「尿場」なのである!
ニヤニヤする車内。互いの名前を呼び合うワキガハラとニョウバ。電車が発車した。珍道中の完成だ!正に目論見通りの空気だ!わたくしパジャマとりやは思った。いや、藤田も思っていた筈だ「この車内では俺たちが主役だ!『おもしろい人』だ」と。
このまま行けば、アッハーも奇天烈な名前で呼んでやろう!何にしよう。「しゃっくり林」がいいか、いっそのこと「うんこがわら」にしてやろうか?
何にしろ、乗客をだまくらかしてやろう!その刹那・・・

アッハー「明日は13時30分ですよ?藤田さん。」

うわうわうわうわうわ・・・・・。彼は言ってしまった。最低だ。最低の三人組の出来上がりだ。乗客の目はもう見れない。
この後、約20分に渡って藤田とわたくしパジャマとりやの罵詈雑言がアッハーの耳に突き刺さった。
藤田とパジャマ「オマエなんかもうトモダチじゃねぇ!」
アッハー「・・・・・・・・・・・。」