中華料理

 今日は火曜日、トータルテンボスの「ワイ!ワイ!ワイ!」の日である。
いつものようにチームトータルの面々が集まった。
放送終了後、トータルテンボスは雑誌の仕事が渋谷の方であるという。
堀江B面とわたくしパジャマとりやがこれに帯同する。
堀江B面とわたくしパジャマとりや、実はこの雑誌の仕事も、毎回いるワイワイワイにも本来呼ばれてはいない!
つまり「仕事」では無いのだ!
仲が良いだけなのだが、集まればそれだけ面白い事が起きる。
その結果、ダジャレではないが本当にワイワイ寄って来るのだ。
そしてそれはチームトータルにとってプラスに働く。
B面は丸2日間眠ってないのに、とりあえず来たかったから来たというくらいだ。
藤田は言う
藤田「集まるのが楽しいんだ!」
なんて正直かつ恥ずかしい発言なのだろう!確かにそうだ。
アッハー小泉がいないのが残念だ。しょうがない、本日彼の事は記憶から消そう。
雑誌の仕事が終わり、テンボスはもう一つ取材があるからと恵比寿に向かうと言う。
時刻は15時を回っていた。突如藤田が提唱する
藤田「腹が減った!地獄だな!飯食おうぜ」
地獄?言うなりあらぬ方向に渋谷の住宅街をズンズン歩いていく藤田。
確かに腹は減っている。全員朝から何も食べていない。
しかしここは住宅街だ。不慣れな土地のはず、店を知っているのか?
その先にはなんと1軒の中華料理屋があった!!
藤田「俺が歩けば大体あるんだよ」
軽く奇跡が起きている事を、藤田はあるある扱いしている。正に奇跡の人である。

住宅街の中にポツリとあるその中華料理屋の佇まい。
古めかしい建物、のれんだけが大層キレイだ。
我々4人、いや、1匹狼大村を除く3人は口々に言い始めた!
パジャマ「この店は住宅街にポツンとある。つまり付近一帯の住民の胃袋を担う存在だ!だからうまい筈だ!」
藤田「そうだ!そしてあの清潔感のあるのれん。建物古くても、料理人は気合に満ち溢れている証拠だ!」
B面「結構イケそうじゃないですか?ここ」
大村「・・・・。」
意気揚々と店に入る。
古めかしい店内。長年かかって油が染み込んだのだろう。
壁や天井が黒ずみ、いい感じの中華屋さんになっている。
藤田がその様子に心を躍らせているではないか!
わたくしパジャマとりや、血湧き肉踊る思いで壁に貼られた年季の入ったメニューを吟味していく。
古い表現だが、わたくしの動物占いは「こじか」である。決して冒険はしない。
この状況でハズレメニューを頼んだ時の哀しさたるや海よりも深いという事を知っているからである。
全員がメニューと勝負する。
一瞬にして会話と笑顔が途切れ、場が緊迫する空気に包まれた。
真剣な眼差し。
店内は車の通る音しか聞こえない。
そして軽口を叩く者はいない。
皆、真剣なのだ。
いぶかしがる店のオバちゃん。
ひとつ、またひとつと心の中でメニューを選抜する。
大村も厳しい表情だ。
藤田が舌打ちする。プランが崩れたのであろう。
首を横に振るB面。
いぶかしがる店のおやじ。
5分は経っただろうか。B面が声を上げた。
B面「肉ニラ卵炒め定食!」
・・・初っ端から勝負に出るとは!大胆な男である。
大村の目が光る。
大村「おい!中華丼だ!」
上から物申す態度に度肝を抜かれる。
いぶかしがる店のオバちゃん。
わたくしパジャマとりやは思った。
(甘い)
甘いんだよ!中華料理屋の味を知る1番のメニューがあるのだよ。
貴様ら、後悔するがいい!
ほくそ笑み、ゆっくりと注文する。
パジャマ「すいません・・・チャー」
その時、藤田の声がカブるっ!!
藤田「チャーハン!」
くはぁ!!!カブられた!やるじゃないか!
気を取り直して店のオバちゃんに伝える。
パジャマ「あ、わたくしもチャーハン」
藤田憲右(29)流石である。自らをグルメと呼ぶだけの事はある。
彼は、藤田はわかっているのだ!
おいしいチャーハンを作るには、大きな火力、確かな腕、絶妙のタイミングが必要なのだという事を!
たかがチャーハン、されどチャーハン、侮るなかれ、そこには中華料理の全てが詰まっているのだ!
つまり、チャーハンの味を見れば、その店の大体のレベルを見る事ができるのである!!
そして、この住宅街で孤軍奮闘し長年の間中華料理屋を営んで来たという事は・・・?
そう、
「技術レベルが高い店」
イコール
「おいしい店」
という判断がなされるのは当然の答えであるっ!!
ようやく訪れた安息の中、料理を待つ。
厨房からはジュワ〜と油が中華鍋をつたい、美しい音色を奏でる。
5分も経っただろうか
中華丼が来た。大村だ。一見目を疑った程だ。
大村「これ中華丼だよな?」
わたくしパジャマとりやに確認する大村の目は後悔に満ち溢れている。
なんとうずらすら乗っていない。
その代わりに半分に割ったゆで卵と、お寿司の海苔巻きに入れる卵でつくったふわふわしたやつが乗っており、その両サイドを固めるのは、何故かラーメンでお馴染みのナルトが!
もはや彼にかける言葉は見つからない。
暴君の異名を取る彼ももこうなっては見る影も無い。
次に来たのは堀江B面の「肉ニラ卵炒め定食」だった!
その姿はまるでモヤシ炒めそのものであった!!ああ無常。
全てを諦めたB面は、ただ箸を動かすだけの屍と化してしまった。
その時、
オバちゃん「ハイ、チャーハンで〜す」
来た!来た!藤田!俺たちの勝利は目前だ!
悔しそうな目でこちらを窺うB面。
その目は「チャーハンにしとけば良かった」と物語っているようだ。
やはり俺たちの目に間違いは無い!
見よ、この光沢、そして沸き立つ卵の香り!
藤田はチャーハンのうまさに声も出ないようだ。黙々と食べ始めた。
いざ出陣!
わたくしパジャマとりやのレンゲが黄色い大地に突き刺さる!!
それは最短距離で我が口内へ!!
ライスと絡まる卵のハーモニー。
静かに存在するネギのアクセント。
絡まりながらもべたつかないサラサラ感。
そして、何よりもチャーハン特有の「旨味」。



その全てが



まるで無いとはどういう事だぁああ!!!!



マズイじゃねぇか!!コンチクショー!!

かくして、負けた男達は無言でそれぞれの道を歩いて行った。
初めてのお店には気をつけるべし。ぶえー。